2012年5月20日日曜日

眠れない一族

食人の痕跡と殺人タンパクの謎
ダニエル T マックス著


題名にある「眠れない一族」というのは、致死性家族性不眠症(FFI)というプリオン病を代々患うイタリアのある家族を指しているが、内容はこの病気以外も含めたプリオン病およびプリオンについてである。
FFIという病気はある日突然眠ることができなくなって、精神状態に異常をきたし、最後に死に至る治療法のない病気だ。そこで不思議なのが、FFIの遺伝子を持っているものは必ず死に至るのに、この家族が少なくとも分かっている範囲で16世紀(17世紀?)からずっと続いているということだ。遺伝は100パーセントの割合で現れる訳ではないのもその一つの理由だが、発症するのが出産や子育てを一段落おえた50代などと遅いこと、またFFIの家系は世界的にみても非常に少なく、病気の原因が長い間特定されず遺伝病と認識されていなかったことにもよると思う。
著者自身も別の種類のプリオン病を患っていて、プリオンについて徹底的に調べた内容は非常に良いと思う。狂牛病についても全容を理解するに必要な情報が詳しく書かれていてよかった。問題点は文章がおかしいこと。非常に読みづらい。始めは翻訳の問題なのかと思ったのだが、おそらく原文でも読みにくいと思う。例えばタイトルは「眠れない一族」で、FFIを患うイタリアの家族の家系図も始めについている。小説仕立てで、FFI病とこの家族に関する話なのかと思いきや、それはほぼ一章くらいで終わる。構成に問題があるような気がする。また文章の流れを見ても、少し途切れて突然ターンするような部分があるのだ。もしかすると著者が体調のよくない時に書いた文章だろうか?そのため、内容はとても良いにもかかわらず非常に読みづらく、読み終わるまでに多く時間がかかった。