2013年4月24日水曜日

投資の正しい考え方

上総介著

タイトルの通り、投資に対する正しい考え方についての本。
サブタイトルが「歴史から学ぶ30の教訓」となっている。教訓ごとに歴史上の戦いを例に挙げ、その後に過去の実際の株式チャートに照らし合わせて解説する構成となっている。
例に挙げられる戦いとは(兵法などが出てくる時代の)中国の名将、日本の戦国時代などである。

私は中国の歴史や日本では特に江戸時代以前に興味がなく、苦手意識があるため(戦国武将などは名前が一文字違いなど紛らわしい、古い時代の漢字を見ただけで興ざめするほど)、なかなか面白いと思えないのだが、本書では楽しく読み進めることができた。株式投資の本ではあるのだが、私のような歴史嫌いには戦国時代の戦いを簡単に紹介した入門書にもなる。読み終わった時に感動してしまった。

特に感心したのは、一番最後にある徳川家のリスクヘッジの話。(よくわからないなりに三国武将では家康が一番好き)幕末に対立した尊王派と佐幕派にはそれぞれその考え方の源があり、幕府を支持する佐幕派の考えは徳川家から発生、と自然なのだが、尊王派は徳川御三家である水戸藩から考え方が発生している。なぜ同じ徳川系列でありながら、幕府に反対する考えを持つのかが著者にとって長年の謎だったそうだが、井沢元彦氏の「戦乱の日本史」という本を読んでその答えに辿りついた。それは佐幕派が負けた時にも徳川家が残るようにと家康が仕掛けたリスクヘッジだということ。子供の頃人質に取られ、家族が別々の家について戦う姿を見てきた家康は、いざ天皇家と対立した場合に水戸藩だけは天皇家側に付くよう密令を下していたのではないかと推測されているそうだ。これが本当ならそれはもうすごいことだ。驚きと感心。

さて、投資の本やブログ、特に株式投資については男性の成功者が多く(おそらく参加者自体も男性が多いから?)、よく品の悪いコメントに出会う。本を読んでみて納得して著者のブログを見たら、その下品さに驚くこともある。こんなことを書く人なのか、と。勝負=男性的?=男性ホルモンが多い?おそらく男性しか読まないことを前提に書かれているような気がする。そんなことは個人の勝手なのだが、例えば女性にも本を売りたいなら、その点も気を使った方が売れるのになぁと思う。この本は一切そういうことがなく、著者の誠実な人柄さえ感じられる。投資で成功した著者は資産運用会社を経営しており、海外30カ国を訪問する予定で、歴史に精通しており、古戦場やお城、資料館を廻って投資に役立たせているとのこと。あぁうらやましい。

2013年4月20日土曜日

株式投資 低成長時代のニューノーマル

菊池 正俊著

ニューノーマルとは、1)世界経済が低成長になり、株式投資がインカムゲインからキャピタルゲイン狙いに変化 2) 政治や政策が市場の方向性を決める割合が高くなりマクロからみたトップダウンの運用が必要 3)リーマンショック後、経済の中心がアジアに移りアジアで活躍する企業の評価が高まっている 4) 先進国は軒並み低金利のため、高い利回りを確保するために世界の多様な資産に投資をする必要がある、と説明される。みずほ証券チーフ株式ストラテジストである著者が述べるニューノーマルはさすがである。リーマンショック後の世界経済についての淡々と客観的な視点でまとめられている。最近世界の経済がどうなっているのか知りたい人はこれを読むといい。仕事をしていてもよく思うのだが、私が勤める会社に限ってかもしれないが、外国人がうろうろしている環境で働いているわりには、外の世界に興味がなく、日本からみた日本という視点でしか物事を見られない人が意外と多いような気がする。(自分もそうだった)これはおそらく日本のメディアによるもので、最近でこそインターネットで世界のニュースが身近になって少し状況は異なるかもしれないが、海外で日本について話されていること、と日本で日本について話されていることは結構異なったりする。英語の雑誌などを読んでいると気が付くのだが、例えば日本の借金がGDPの200%でそれが世界でもワーストナンバー1ということは数年前から取り上げられている。国民一人当たり確か700万円だかの借金を抱えていることになる。結構大変なことだと思うのだが、日経新聞にでもあまり掲載されていないような気がする。一度かなり小さめの記事で控え目に書かれていることはあったが。何も欧米主導の英系メディアと同じ見解や意見を持つ必要はないが、少なくとも世界が日本をどう見ているか、日本は世界でどの立ち位置なのかを知っておくことは重要だと思う。著者は外国人投資家に日本株を紹介する経験より、日本経済、日本市場を世界における日本経済、日本市場として見ることができるため、本書のように書くことができるのだと思う。特に興味深かったのは日本企業の競争力と経営課題という章。日本企業のROEが低く、海外投資家にとって魅力的ではないと書かれているが、収益性を度外視して品質にこだわってしまう製造業の例が出てくる。これは本当によくわかる。おそらく製造業ではなくても仕事をしていて、利益よりも品質やプロセスのことを考えて仕事をする日本人の方が多い。結果を基準に仕事を計画せずに、プロセスと皆にいい顔をすることに注力するため、なかなか結果に辿りつかない。日本人にしか生み出すことのできないきめ細かなサービスや品質は誇るべきものだけれども、下手をするとお金のことを忘れて頑張っているうちに、要領のよいアジア企業にビジネスを奪われ会社自体が潰れてしまう、なんてこともあるかもしれない。自分(日本)を伸ばすために、まずは他者(他国)を知ってみるための良い本である。


2013年4月19日金曜日

見せびらかすイルカおいしそうなアリ

動物たちの生殖行為と奇妙な生態についての69話
パット センソン著

大学で生物学を学んだカナダ放送協会ラジオの科学担当者である著者が様々な生き物たちの生態や生殖行動について書いた本。1話につき2-3ページで終わるので、読みやすくとても面白い。
生物が繁殖をしてうまく子孫を残すために多様な進化を遂げていることがよくわかる本。なかでも驚いたのが、魚には一生のうちに雌雄を変化させたり、無性生殖するものが存在しているということ。例えば、ファインディングニモでお馴染みのオレンジクラウンフィッシュはサンゴの中に数匹が一緒に暮らすのだが、その中で一番体の大きいものが雌、次に大きいものが雄で、残りは雌雄がない。そして雌が死ぬと、雄の体が大きくなり雌になる。一つのグループに大きさを基準にした序列があり、残ったもののうち一番体の大きいものが雄になるというわけだ。生き物好きな方にはおすすめの本。


2013年4月13日土曜日

同時通訳

松本 道弘著

アポロ11号の月面着陸を初めて英日同時通訳された西山千氏に学んだ著者が、西山氏や通訳という仕事の心得について書いた本。なんと表現していいかわからないが、独特の詩的?なリズムがあり、私(30代)からすると年の差が大きいため、理解しがたい点があるが、日本における通訳者のはじまりを書いた貴重な本。通訳技術を上げるためや、通訳とは何かを知るための実用本として考えて購入すると期待外れだと思うが、日本における初期通訳者やその時代を感じ取るには良い本。

アメリカは日本経済の復活を知っている

浜田 宏一著

著者はイェール大学名誉教授であり、2002年より内閣府経済社会総合研究所所長、前日銀総裁白川氏は著者の教え子とのこと。白川総裁下の日銀が経済学上関連性のない人口減少をデフレの原因としており、1998年に施行された新日銀法により独立性を得た日銀が金融政策の手段のみならず、目的を設定する権限を得、責任は取らない状態になってしまったことを批判している本。日本経済の再生に消費税増税の前にまずは大胆な金融緩和によりデフレを脱却すべきだというの考えで、現在の日銀の方針とぴったり一致。本著の発行が今年の1月なので、一般大衆から現日銀の金融政策の支持を得るために書かれたのかと思う。著者の知り合いとして世界でも著名な経済学者が幾人も登場するが、タイトルに書かれたことから期待する、アメリカが日本経済についてどう考えているかについてはほとんど書かれていないため、タイトルに裏切られた印象はある。
個人的には批判は好まないため、特に前白川総裁について書かれた部分は良い印象を受けない。また、一部で言われている日銀が国債を貨幣の流通残高以下に抑える銀行券ルールを停止することにより、日銀が国の負債を制限なしに引き受けると受け止められることによって、信頼が失われハイパーインフレに陥るという意見や、国のプライマリーバランスを黒字化することに関してどのような考えがあるのかも知りたかった。

日本のメディアが日銀から情報をもらうという体制になっているため、結局のところ、日銀に好まれるような報道しかできない、また日本のメディアの経済に関する知識が乏しく、問題をきちんと理解できていないなど書かれていることは興味深い。

過去の金融政策と景気について知りたい場合は、現在読んでいる「株式投資 低成長時代のニューノーマル」の方が淡々と事実を述べており、客観的に判断する材料を与えてくれるようなので、そちらの方がいいかもしれない。

2013年4月7日日曜日

リスク限定のスイングトレード

矢口 新著

著書「実践・生き残りディーリング」がディーラーの座右の書とされている矢口氏の新しい投資手法エスチャートを紹介する本。現在会員制でこのエスチャートが使用できるサービスを提供しており、サービスの宣伝のようになっている。ただ株価の価格がどのような要因について変動するかや、日本や世界のマクロ経済など大局的な情報の部分はためになる。著者はディーラーという職業で相場と長い間付き合ってこられた方。元となる経済、金融の知識は何より世界の様々な情報を随時更新していかなければならないというディーラーという職業はなかなかかっこいいと思った。頭を使ってどう動くか分からない生き物を追う、知的うなぎ取り?みたいな仕事だ。

2013年4月2日火曜日

10年後に差が出る!富を作るために「お金」と「経済」を学びなさい

菅下 清廣著

大和証券からメリルリンチに転職し、若い時期にアメリカで過ごしたことが、転機となった著者が日本の20〜30代に向けて書いた本。経済や金融の知識を身につけ、豊かな人生を送ることを勧めている。

日頃ニュースで耳にする為替、株価、物価(インフレ、デフレ)などについて誰でもわかるように説明されている。

今まであまり考えなかった円高が貿易に与える影響については面白かった。日本は資源に恵まれていないため、原材料を輸入し、加工して輸出している国だ。円安が輸出に与える良い影響については普段触れられるものの、輸入に対する悪影響はそれほどでもない。例えば貿易で輸出取扱量が減った原因として円高が挙げられることは多いが、逆に円高だから輸入量が増えるというわけではないので、普段から少し不思議に思っていた。それが本書で解決した。日本が輸入するのは大半が資材や素材である。それら、例を挙げると鉄や銅は国際商品取引市場で価格が決められている。よって円高だからといって、それらの価格が安くなるとは限らないとわけらしい。今思ったのだが、円高で輸入が単純に増えない理由は輸出で売るべき製品が売れないのだから、資材もそんなにいらないということかもしれない。

普段ニュースで流れるキーワードをかなり簡単に説明した本なので、高校生や大学生にもお勧めできる本だ。