2012年3月21日水曜日

大暴落 1929

ジョン・K・ガルブレイス著

1929年にアメリカで起こった株の大暴落について、大暴落が起こるまでの経緯とその後について書かれた本。原因と結果について最後に記述されてはいるが、なぜ大暴落が起こり、どうすべきだったかと具体的に分析をしたり、著者の意見を示しているというよりは、その当時の時代が含む様々な状況を客観的に記述したもの。
暴落までの出来事が時系列に書かれているため、物語のように楽しんで読めてしまうが、基本法な金融の知識は必要。人間の欲や期待という心理的なもので株式が生き物のように動くのは、いつ考えてもとても不思議に思える。

2012年3月20日火曜日

銃・病原菌・鉄 上

ジャレド・ダイアモンド著

人類の歴史をアメリカ、ヨーロッパを中心に書かれたいわゆる世界史ではなく、東アジア、太平洋を中心に書かれた本。どこかでみた書評に、ダーウィンの進化論と同じ方法で人類の歴史を書いたものとされている。

なぜ、ある地域では農耕が始まり、他の地域では始まらなかったか、なぜ、ある地域では多くの動物が家畜化されたか、新大陸に進出したヨーロッパ人と、滅びた原住民の違いは何か、など一つ一つの条件を検証しながら、論を立てていく。

やはり、私にとって一番面白いのは病原菌の部分。(ちなみにウイルスに触れているので、病原体であるべきじゃないのかなどと考え悶々としている。原題ではGerms) ヨーロッパ人が新大陸の原住民を滅ぼした原因は単に強い武器を持っていただけではなく、原住民がそれまで遭遇したことのない新しい病原体をもたらしたことにもあると書かれている。ではなぜ、逆が起こらなかったかといえば、南北アメリカでは、病原体の繁栄する環境、狭い範囲で動物を飼育するという動物の家畜化がなく、(南北アメリカには家畜に適した動物種が少ない) また、農耕を主に暮らす、自身の糞尿にさらされる機会も少なかったからとされる。つまり、これらに適応してきたヨーロッパ人はにはある抗体が原住民にはなかった。

最初の部分、地理が出て来るので苦手な私は、時々放棄し読み終わるまでに一年以上かかった。下巻を読み終わるのはいつのことやら。

2012年3月17日土曜日

動物園にできること

「種の方舟」のゆくえ
川端 裕人著

アメリカの動物園による生物種や環境保護に対する取り組みについて、著者本人が動物園を訪問し、各関係者に直接取材をしてまとめた本。1999年に出版されているので、現在とは少し状況が違うかもしれないが、アメリカという動物園先進国の状況がよく分かるような内容になっている。

現在の上野動物園のライオンやゴリラの飼育設備がこれに該当するが、実際の棲息環境に似せた飼育環境を作るイマージョンと呼ばれる展示方法はアメリカで1980年代からブームになった。確かに見る方にとっても、狭いコンクリートの檻に入れられているよりは、森林や草原を模した飼育設備の中に動物なんやってがいる方がいい。しかし動物にとってそれは、本当にいいことなのか?著者の問いは続く。
本来の行動が限られる飼育下では、動物が同じ場所の往復を繰り返す、食べ物を食べては吐くを繰り返すなどの異常行動が見られるが、これらをなくすための、エンリッチメントという取り組みがある。例えば熊は自然下では、一日中のほぼ大半を餌探しに費やす。日に数回決められた時間に、餌がもらえる動物園では退屈過ぎるのか、良くないらしい。熊を幸せにするために、ある動物園では日に何度も工夫に凝らして、餌をあちこちに隠したり、ばらまいたりする。1981年から始められた飼育下にある動物の遺伝子の多様性を守りながら、種の保存に取り組むSSP(Species Survival Plan)、そしてそこから発する余剰個体の問題、絶滅危惧種の野性復帰など、動物園が関わる役割や問題は計り知れないように思えた。

最後に日本の動物園の遅れが指摘されている。日本の動物園は自治体に運営されていることが多いため、お役所仕事のようになってしまうことが、一つの原因らしい。

さて、この本が書かれて13年が立った今、現状は変わっているのだろうか。

2012年3月12日月曜日

ピーター・リンチの株の教科書

儲けるために学ぶべきこと
ピーター・リンチ、ジョン・ロスチャイルド著

速読の飛ばし読みで読んでみた。資本主義の歴史から始まり、具体的な投資の種類、そして会社の一生について書かれている。投資の種類は投資信託、国債、不動産、株式と一通り基本の説明がある。面白く思ったのは、そもそも株式投資の前提になる会社の始まりから触れている資本主義の歴史と、会社の一生。元々ヨーロッパ人が、新大陸での新しいチャンスを目指す人々に資金を提供したのが、投資の始まり。1602年にはオランダの投資家が、オランダ東インド会社の株式を買っていた記録がある。その後さらなる開拓ビジネスの需要に応え、アメリカ中に銀行が次々と設立される。証券取引所もでき、発明品、鉄道、工場での大量生産とアメリカ経済は勢いを増していく。そして1929年の株の大暴落。こうして、歴史の中で考えると、つくづく投資の本来の姿が浮かび上がる。会社の一生では、会社を設立から衰退までのいくつかの段階に分けて、どういうことが、会社の一生に起こりえるか、そしてそれらの出来事がどのように投資に影響するかが説明されている。
ピーターさんは投資というものが、本当に好きなんだと思う。読んでいると、なんだか彼の「好き」が滲み出てくる。

2012年3月7日水曜日

破壊する創造者 - ウイルスが人を進化させた

フランク ライアン著

タイトルを見て、ウイルスと進化だけに触れているかと思うとそうではない。これまでの進化論の中核(?)となる突然変異と自然選択以外にも、ウイルスとの共生、異種交配やエピジェネティクスなどが進化に影響を与えている可能性があるということを主張している。
大体、私はダーウィンの進化論も、自然選択もきちんと分かってないので、結構分からない部分があった。ただ、文章自体はとてもわかりやすいため、「ここを分かるにはまずこっちを勉強だな」という風に、次に学ぶべきことがはっきりする。
著者は医師で、この著作によって様々な各分野の研究者の研究成果を繋げて、新しい進化論を提唱しているようだ。

遺伝子は人ゲノムのわずか1.5%を占めているだけで、人間が過去に感染した名残りのレトロウイルスは9%を占める。さらに残りは一体なんなのかよく分かっていない。この1.5%の遺伝子の解明に主に研究者達の力は注がれ、残りはないがしろにされ気味なのだが、著者はその部分にも進化の秘密が隠されていると考えている。

人間の細胞にはミトコンドリアがあるが、これは元々単独で生きていたミトコンドリアが別の細胞に取り込まれた結果こうなったと考えられている。このような共生学を研究する人々と、進化論を研究する人々が、交わることがないため、また人間に病を引き起こすウイルスは悪として扱われていることもあり、共生による進化(ウイルスとの共生による進化)へと発展しない。

私の文章のぎこちなさで、分かると思うが、とにかく基本的な進化論やゲノムの知識がないと、理解をするのは相当難しい。もう少し挿し絵を増やしてくれるといいなと思う。図書館で借りたので、時間の制限もあり、不完全燃焼のような読み方で終わらせるが、それでも、とても面白く、久しぶりにのめり込んでしまった。

生物の仕組みは果てしなく複雑で、本当に驚きの連続だ。何でそんなことに興味があるのかと聞かれても困るが、ただただ、面白くてたまらない。