2012年4月27日金曜日

たんぱく質入門

武村 政春著

たんぱく質とはどういうものか教えてくれるその名の通り入門本。色々な本を読んで病気や食べ物について考えている中で、生物の基本であるたんぱく質について理解したいと思い手にとった。たんぱく質が20種類のアミノ酸で成り立っていることは知っていたが、実際どのようにアミノ酸から成り立っているか、DNAがたんぱく質を作るための情報を持っていることは知っているが、具体的にどのようにたんぱく質を作り出しているかなど、私の中に様々な疑問があった。この本を読むことでそれは解消できた。しかしながら、これを書いている今(6月23日)は読み終わって2月くらい経っているのだが、内容を結構忘れている。生物系の本を結構読んできたので、それなりに積み重なってそろそr忘れないくらいしっかり理解できた事柄もあるが、なかなか難しい。これは忘れないでおこうと頭の中で何回か繰り返して覚えたのが、たんぱく質の構造。20種類のアミノ酸はほぼ同じ構造をしていて側鎖という部分だけが異なり、その違いをつくっている。アミノ酸同士がペプチド接合でつながったポリペプチドが一次構造、それらがくっつき板状や螺旋状になる二次構造、二次構造を折り畳んでできる三次構造でたんぱく質となる。そして三次構造が集まってともに働くたんぱく質複合体(四次構造)というのもある。とても複雑だ。そしてとても美しいと思う。命の構造を知れば知るほど、その美しさに魅了されてしまう。

2012年4月26日木曜日

キリング・フィールドへの旅

カンボジアノートII
波田野 直樹著

1975年から1979年の間にカンボジアではクメールルージュによる国民の大虐殺が行われた。本著は虐殺行為の残虐さに焦点を当ててはいるのではなく、当時のカンボジアを取り巻く環境や時代背景を確認しながら、なぜ彼らがそのような方向に向かったかという一つの疑問を、虐殺の場への訪問と集めた資料を通して解こうとしている。
先日NHKオンデマンドで、国連の国際裁判所によるクメールルージュ幹部と処刑施設トゥールスレンの所長に対する裁判のドキュメンタリーを見た。そのせいか図書館の本棚にあるこの本に目が止まってしまった。私みたいな文章の下手な人間が言うのもなんだが、この本の文章は、色気なく歴史上の事実を並べたノンフィクションとは異なり、小説のように書かれていて、読みやすい上に文章が美しい。どう表現していいかわからないのだが、すばらしい。
始めの方に使用される用語の定義が述べられる。その中で始めてはっきりとその定義を認識したのがジェノサイドだ。ジェノサイド(民族、宗教、国民などの集団に対する大虐殺)はユダヤ人学者が第二次世界大戦中のホロコースト以降に創り出した言葉だそうだ。現在は人類に対する罪として認識されている。

そして私が長く疑問に思っていた点に触れる。戦争を根絶できないように虐殺もまた根絶できない。人間というのは不思議な存在で、相反する要素を未整理のまま内包した存在である。戦争や殺人がなぜ起こるのか不思議である。もしそれがその存在にとって悪いことであれば、自然と殺人や戦争が起こらないように思える。しかしながら、人類の歴史ではいつもどこかで戦争や殺人が起きている。一つの規範の中では穏やかに暮らす人間も、一旦別の規範に入れられてしまえば、残虐なことを平気で行えるようになる。

S21と呼ばれていたトゥールスレンやその他の処刑場所の訪問、政治的な背景、クメールルージュ幹部達と同時期にパリに留学していたカンボジア人との会話、現在のカンボジア人がどう受け止めているかなどを通して、著者が経験したものを共有することができる。

さて、なぜ彼らが一説には170万人といわれている数の自国民を虐殺したのか、その理由について明確な結論は述べられていない。読者自身がその答えを出すよう求めているかのようだ。

2012年4月22日日曜日

いま伝えたい細菌戦のはなし

隠された歴史を照らす
森 正孝著


第二次世界戦争時に、日本軍が中国の一般人が住む村や民家に細菌を散布して、多くの人々が亡くなったという出来事を、その体験者やこれに参加した元日本軍兵士の証言、日本軍による記録を元に書かれた本。著者は元731部隊について研究をされていたそうだが、人体実験以外に細菌散布を実践していたことを知らず、中国に訪れ731部隊の跡地を訪れた際に出会った中国人によりそのことを知ったそうだ。731部隊は京大医学部卒、陸軍軍医の石井四郎がヨーロッパを視察した際に各国が細菌研究に力を入れているが、日本は遅れているとして軍関係者に細菌戦研究の専門施設をつくるよう訴えたのが始まりとのこと。その頃、世界では細菌戦について既に研究がなされており、使用された場合の結果が悲惨になると認識されていたため、既にジュネーブ条約で毒ガスとともにその使用が禁止されていた。捕虜の取り扱いについてもそうだが、第二次世界大戦時、日本はジュネーブ条約を随分無視しているように思う。中国ハルビンを研究拠点として、日本軍はコレラ、ペスト、パラチフスといった病原菌を捕虜を使って研究し、菌を感染させた蚤を撒いたり、菌を井戸に投げ込んだり、菌を含んだ餅を配ったりして軍人ではない一般の人々も多く死なせたとある。本書の後半では実際にそれらの悲劇を経験した被害者と加害者両方が写真と実名を公表して話を載せている。一つ疑問に思うのが、日本軍はなぜ一般市民に向けてこれを実施したのかということ。それが後々細菌戦として兵士向けに使用するための実験であったのか、細菌戦が中国との戦争や太平洋戦争における日本軍の戦略でどのような位置を占めていたか、などについては書かれていない。戦争は本当にひどいことが多く起きる。平和に暮せることに感謝する。

2012年4月18日水曜日

食べ物はこうして血となり肉となる

中西貴之著


まず最初に食べたものがどのように栄養となるかについて説明がある。口から入った食べ物は食道を通り胃で消化され、腸で吸収され、血の流れに乗って体中に分布され、代謝され、不要となったもが排泄される。
その後は海の物、山の物、動物性食品といった分類別に具体的な食品名があげられ、その食品に特徴的な栄養成分ごとの説明がなされている。例えば、アン肝の説明では、アン肝にはビタミンDが多く、骨をつくる骨芽細胞に作用して新たな骨をつくることに作用しているなどとある程度詳しく書かれているが、文章が平易なので読みやすい。普段食べているものにどういう利点や欠点があるのか知りたい時に、楽な気持ちで読めるのでお薦め。

2012年4月15日日曜日

新版 ぼくが肉を食べないわけ

ピーター・コックス著
ベジタリアンの間ではどうも有名らしいこの本。どうして肉を食べるべきでないかについて、多方面から述べられている。1999年に新版として出版されているのが、これはまさに英国が狂牛病で肉の食べることの恐怖につつまれていた時期と重なる。ちなみに前後に約1年間英国に住んでいた私は今でも献血ができない。牛の狂牛病は人間に感染した後、クロイツフェルトヤコブ病として発病するまで20-30年かかることもある病気である。(人に一旦感染した狂牛病ウィルスが人へ感染した場合の発病までの期間は短い。)ではなぜ、牛にそのような病気が発生するのか、その原因について本著に書かれている。英国食肉産業では、肉の切れ端やくず肉などを集めてボイルし、脂肪とたんぱく質に分ける。脂肪はマーガリンや石けんなどに利用され、たんぱく質は家畜の餌になる。そう、草食動物で本来、動物を食べるようにできていない牛などに動物のたんぱく質が与えられていたことにより、狂牛病が流行したのだ。肉は危険なので食べるべきではないという一つの根拠だ。また食肉がどのように生産されるか、動物たちがいかにその権利を無視された環境で飼育されているか、など動物がかわいそうなので肉を食べるべきではないという説明、またがんなど、様々な病気が肉食をしている人に発生する可能性が高いので、健康のために食べるべきではないなどという説明がされている。

この本が書かれてから10年以上が経っており、また肉食の歴史が長い英国の話でもあり、病気に関する肉食の方が悪いというデータの全てを信じていいわけでもないが、一度自分が食べているものがどのように生産されるのかを知るために、多くの人に読んでもらいたいと思う。それを知った上で、積極的に肉を食べたい人は食べてもいいと思う。

この本を手に取ったきっかけは実は最近観た映画にある。「いのちの食べ方」というオーストリアのドキュメンタリーで、食品生産現場が台詞や説明なしに淡々と映されている。そこに牛がおでこに機械をあてられて殺される(気絶させられる?)場面が出てくる。この光景がなんともかわいそうで、牛肉を食べづらくなってしまった。不思議なことにその後、お腹が裂かれて血がたくさん出る場面では既に食用肉と認識しているらしく、かわいそうに思わない。あの嫌がる牛がばたんと首をうなだれる姿が頭から離れない。実際、撮影を依頼する段階で動物を殺す場面だけは見せられないと断った業者が多かったらしい。以前にマクロビオティックを始めた際には続かなかったが、色々考えた末に肉食を控えるべきかと思いこの本を借りた。現在は人付き合いなど、優先すべき時だけ肉を食べるようにしている。