ピーター・コックス著
ベジタリアンの間ではどうも有名らしいこの本。どうして肉を食べるべきでないかについて、多方面から述べられている。1999年に新版として出版されているのが、これはまさに英国が狂牛病で肉の食べることの恐怖につつまれていた時期と重なる。ちなみに前後に約1年間英国に住んでいた私は今でも献血ができない。牛の狂牛病は人間に感染した後、クロイツフェルトヤコブ病として発病するまで20-30年かかることもある病気である。(人に一旦感染した狂牛病ウィルスが人へ感染した場合の発病までの期間は短い。)ではなぜ、牛にそのような病気が発生するのか、その原因について本著に書かれている。英国食肉産業では、肉の切れ端やくず肉などを集めてボイルし、脂肪とたんぱく質に分ける。脂肪はマーガリンや石けんなどに利用され、たんぱく質は家畜の餌になる。そう、草食動物で本来、動物を食べるようにできていない牛などに動物のたんぱく質が与えられていたことにより、狂牛病が流行したのだ。肉は危険なので食べるべきではないという一つの根拠だ。また食肉がどのように生産されるか、動物たちがいかにその権利を無視された環境で飼育されているか、など動物がかわいそうなので肉を食べるべきではないという説明、またがんなど、様々な病気が肉食をしている人に発生する可能性が高いので、健康のために食べるべきではないなどという説明がされている。
この本が書かれてから10年以上が経っており、また肉食の歴史が長い英国の話でもあり、病気に関する肉食の方が悪いというデータの全てを信じていいわけでもないが、一度自分が食べているものがどのように生産されるのかを知るために、多くの人に読んでもらいたいと思う。それを知った上で、積極的に肉を食べたい人は食べてもいいと思う。
この本を手に取ったきっかけは実は最近観た映画にある。「いのちの食べ方」というオーストリアのドキュメンタリーで、食品生産現場が台詞や説明なしに淡々と映されている。そこに牛がおでこに機械をあてられて殺される(気絶させられる?)場面が出てくる。この光景がなんともかわいそうで、牛肉を食べづらくなってしまった。不思議なことにその後、お腹が裂かれて血がたくさん出る場面では既に食用肉と認識しているらしく、かわいそうに思わない。あの嫌がる牛がばたんと首をうなだれる姿が頭から離れない。実際、撮影を依頼する段階で動物を殺す場面だけは見せられないと断った業者が多かったらしい。以前にマクロビオティックを始めた際には続かなかったが、色々考えた末に肉食を控えるべきかと思いこの本を借りた。現在は人付き合いなど、優先すべき時だけ肉を食べるようにしている。