2012年3月7日水曜日

破壊する創造者 - ウイルスが人を進化させた

フランク ライアン著

タイトルを見て、ウイルスと進化だけに触れているかと思うとそうではない。これまでの進化論の中核(?)となる突然変異と自然選択以外にも、ウイルスとの共生、異種交配やエピジェネティクスなどが進化に影響を与えている可能性があるということを主張している。
大体、私はダーウィンの進化論も、自然選択もきちんと分かってないので、結構分からない部分があった。ただ、文章自体はとてもわかりやすいため、「ここを分かるにはまずこっちを勉強だな」という風に、次に学ぶべきことがはっきりする。
著者は医師で、この著作によって様々な各分野の研究者の研究成果を繋げて、新しい進化論を提唱しているようだ。

遺伝子は人ゲノムのわずか1.5%を占めているだけで、人間が過去に感染した名残りのレトロウイルスは9%を占める。さらに残りは一体なんなのかよく分かっていない。この1.5%の遺伝子の解明に主に研究者達の力は注がれ、残りはないがしろにされ気味なのだが、著者はその部分にも進化の秘密が隠されていると考えている。

人間の細胞にはミトコンドリアがあるが、これは元々単独で生きていたミトコンドリアが別の細胞に取り込まれた結果こうなったと考えられている。このような共生学を研究する人々と、進化論を研究する人々が、交わることがないため、また人間に病を引き起こすウイルスは悪として扱われていることもあり、共生による進化(ウイルスとの共生による進化)へと発展しない。

私の文章のぎこちなさで、分かると思うが、とにかく基本的な進化論やゲノムの知識がないと、理解をするのは相当難しい。もう少し挿し絵を増やしてくれるといいなと思う。図書館で借りたので、時間の制限もあり、不完全燃焼のような読み方で終わらせるが、それでも、とても面白く、久しぶりにのめり込んでしまった。

生物の仕組みは果てしなく複雑で、本当に驚きの連続だ。何でそんなことに興味があるのかと聞かれても困るが、ただただ、面白くてたまらない。