2013年4月20日土曜日

株式投資 低成長時代のニューノーマル

菊池 正俊著

ニューノーマルとは、1)世界経済が低成長になり、株式投資がインカムゲインからキャピタルゲイン狙いに変化 2) 政治や政策が市場の方向性を決める割合が高くなりマクロからみたトップダウンの運用が必要 3)リーマンショック後、経済の中心がアジアに移りアジアで活躍する企業の評価が高まっている 4) 先進国は軒並み低金利のため、高い利回りを確保するために世界の多様な資産に投資をする必要がある、と説明される。みずほ証券チーフ株式ストラテジストである著者が述べるニューノーマルはさすがである。リーマンショック後の世界経済についての淡々と客観的な視点でまとめられている。最近世界の経済がどうなっているのか知りたい人はこれを読むといい。仕事をしていてもよく思うのだが、私が勤める会社に限ってかもしれないが、外国人がうろうろしている環境で働いているわりには、外の世界に興味がなく、日本からみた日本という視点でしか物事を見られない人が意外と多いような気がする。(自分もそうだった)これはおそらく日本のメディアによるもので、最近でこそインターネットで世界のニュースが身近になって少し状況は異なるかもしれないが、海外で日本について話されていること、と日本で日本について話されていることは結構異なったりする。英語の雑誌などを読んでいると気が付くのだが、例えば日本の借金がGDPの200%でそれが世界でもワーストナンバー1ということは数年前から取り上げられている。国民一人当たり確か700万円だかの借金を抱えていることになる。結構大変なことだと思うのだが、日経新聞にでもあまり掲載されていないような気がする。一度かなり小さめの記事で控え目に書かれていることはあったが。何も欧米主導の英系メディアと同じ見解や意見を持つ必要はないが、少なくとも世界が日本をどう見ているか、日本は世界でどの立ち位置なのかを知っておくことは重要だと思う。著者は外国人投資家に日本株を紹介する経験より、日本経済、日本市場を世界における日本経済、日本市場として見ることができるため、本書のように書くことができるのだと思う。特に興味深かったのは日本企業の競争力と経営課題という章。日本企業のROEが低く、海外投資家にとって魅力的ではないと書かれているが、収益性を度外視して品質にこだわってしまう製造業の例が出てくる。これは本当によくわかる。おそらく製造業ではなくても仕事をしていて、利益よりも品質やプロセスのことを考えて仕事をする日本人の方が多い。結果を基準に仕事を計画せずに、プロセスと皆にいい顔をすることに注力するため、なかなか結果に辿りつかない。日本人にしか生み出すことのできないきめ細かなサービスや品質は誇るべきものだけれども、下手をするとお金のことを忘れて頑張っているうちに、要領のよいアジア企業にビジネスを奪われ会社自体が潰れてしまう、なんてこともあるかもしれない。自分(日本)を伸ばすために、まずは他者(他国)を知ってみるための良い本である。