2009年5月27日水曜日

DNA (下)

ゲノム解読から遺伝病、人類の進化まで
ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著
"DNA"  by James D. Watson with Andrew Berry

読み終わって、感動した。こんな風に背中がぞくぞくするほど新しい驚きに出会ったのは随分久しぶりだ。ゴダールの映画を始めて観た時も、プラハに初めて旅行した時もびっくりしたけれど、ちょっと違う。目の前に新しい世界が広く開けていく感じがした。しかも、自分自身をも構成している小さな細胞の中にとても複雑で壮大な世界が広がっていると思うと怖いような、どきどきするような、不思議な気持ちになる。

「私は、二重らせんの発見に続くこれまでの研究者人生で、進化が私たちの細胞ひとつひとつに組み込んでくれた荘厳なしくみに大きな畏敬の念をいだいてきた」という言葉を読んだ時にまるで私も一緒に研究してきたのか?(そうならもっと内容が理解できるはずだけど)と思ったくらいに感動してしまったのだ。本当に「荘厳なしくみ」なのだ。

そして、私たちも宇宙という荘厳なしくみの一部だという事実を考えると鳥肌が立ちそうになる。

遺伝子研究の進歩をさせ、その技術を活用し、遺伝病や病気に苦しむ人たちを助けたいという著者の気持ちが伝わってくる。本当にすごい人だなと思った。どんな脳みそをしているのか見てみたい。いつも思うのだが、すごい人は自分が宇宙を構成するひとかけらであることを自覚して、社会、世界、そして宇宙に貢献できるようなことにエネルギーを使う。

私なんか、まるで自分一人で生きていけると勘違いしているんじゃないかと思うくらい自己中心的な瞬間がある。まったく、本当の意味でわかってない。他の生物が存在しなければ命さえも危ういのに。

すごい人には一体何か違うものが見えているのだろうか、それとも何かを追求しその果てに行き着いた人になら誰にでも見えるものなのだろうか。