2010年4月5日月曜日

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

福岡伸一著

生命、生命現象についていくつかの切り口から書かれている。一般向けに書かれているため読みやすい。
タイトルの動的平衡とは生命が動的に平衡を保っていること、つまり体の細胞が常に入れ替わりながらもバランスを保ち生命を維持しているということらしい。

今回学び、特に驚いたのは二点。
一つ目は胃の内部は体外にあたるということ。
「消化管の内部は一般的には『体内』と言われているが、生物学的には体内ではない。つまり、体外である。人間の消化管は、口、食道、胃、小腸、大腸、肛門と連なって、身体の中を通っているが、空間的には外部と繋がっている。それはチクワの穴のようなもの、つまり身体の中心を突き抜ける中空の管である」 
そしてミミズやナメクジの体にも一本の管が通っており、この消化管に沿ってある神経細胞で考えているらしいと、人間の消化管に沿って末梢神経が存在し脳で情報伝達に関わる神経ペプチドが消化管の神経細胞でも使われているとある。今のところなぜ神経ペプチドが消化管付近に大量に存在するのかはよくわかっていないらしい。

二つ目はカニバリズムを避ける理由。病気というのは鍵と鍵穴のような関係によって成り立つ。通常一つの種の病気は他の種には移らない。しかし、人が人を食べれば病原体をそっくりそのままもらってしまうことになる。実際にパプアニューギニアにクルー病という病気があり、これは死者の脳を食べるという風習が原因だったらしい。この風習をやめさせたところ、病気は一世代でなくなったと。

ザリガニとかハムスターとか結構共食いするが、病気にならないのだろうか。檻や水槽という狭い人工的な環境のせいで起こってしまい、自然界ではあまり起こらないことなのだろうか?

それにしても細胞が常に壊され、新しく作られ、そうした動きが私たちの体を維持しているというのは非常に不思議な気がする。
変わらないものは一つもない、私たち自身が常に変わっているのだから。
ヒトは思うより自分自身のことを知らない。