2010年4月28日水曜日

知らないと恥ずかしい ジェンダー入門

加藤秀一著

2010年4月28日

引き続き、仕事のために読んだ本。

ジェンダーとは何かについて書かれている。これは入門本。

「この本はジェンダーについてのほんとうの入門書です。みなさんがジェンダー論の豊かな知的フィールドに踏み出すために、最初の手がかりを提供したい。<ほんとうの>という意味には、そんな願いが込められています。」と最初にある。

とても面白く、分かりやすい文章だけれども、言葉の定義について語っているところなどは、頭がこんがらがりそうになる。ジェンダーとは何かを知りたい人はぜひ読んでみてほしい。間違ったことを書きそうなので、笑えたポイントを引用、ちょっと長いですが。

ところで最近、「男も差別されている」といった言いまわしをする人が増えてきたような気がします。中高年男性の自殺が増えるなど、日本の男性たちが直面している生きにくさがクローズアップされるようになるにしたがって目立ってきたように思えます。そういう背景を考えれば、この言いまわしに込められた意味は理解できなくはありません。
けれども性差別の全体を考えるなら、男性も(女性とおなじように)差別されているというのは言葉として不正確であり、差別という言葉の濫用と言うべきです。差別という以上、そこには集団ごとの序列化があり、差別する側と差別される側がある。そして、ジェンダーに関わる限り、男性が優位で女性が劣位というのが私たちの生きる社会の現実です。そういう最低限の基本的な意味をキープしておかなければ、まともな議論はできなくなってしまいます。
必ずしもそうではない、女性が有利なこともあると言いたくなる人がいるかもしれません。もしもそれが「全体的には男性のほうが女性よりも優位だが、なかには女性であることをうまく利用して、他の女性や男性よりもトクをしていいる女性もいる」という意味であれば、そういうこともあるだろう、としか言いようがありません。もちろんその逆に、男であるがゆえに、たまたま個人として損としているような場合もあるでしょう。けれどもそれが、「女性全体が男性全体に比べて優位である」ということを言っているのだとしたら、明らかな誤りです。そういう主張をする人が証拠としてよく持ち出す根拠には、電車の女性専用車両だとか、映画館の女性割引だとかいった、どうてもいいようなセコイ例が多いのですが、関東人の私でも思わず「アホちゃうか」と呆れてしまいます。そんなことを言うのだったら、映画館の男性割引をつくる代わりに、男性100に対して女性65という平均賃金の格差をさかさまにしてもいいんですね、と訊いてみたいですね。

ちなみに著者は男性。日本の社会で生まれ育っていなければ、私はアシスタントにはなっていないなというのが正直なところ。
まぁ、この辺は考え出すときりがないのでやめる。やはり枠からはなかなか逃れられないものだ。